[16] アップデートする仏教──心と体に即効性があるのが仏教だ!/山下良道、藤田一照(幻冬舎新書)

 この本は、著者の二人が30年間にわたって日本、アメリカ、東南アジアなどで仏教修行を重ね、その結果たどり着いた「バージョン3.0の仏教」について書かれたものです。

 タイトルに「アップデートする」となっていますが、それは従来の仏教(ソフトウェア)の不具合を解消するためにバージョン・アップしたという意味です。順を追って「仏教1.0」から「仏教3.0」までを取り上げています。

 

 まず、「仏教1.0」ですが、日本の仏教のあり方について名づけられたもので、「職業として葬式や法事をやっている人が担っている仏教」という意味です。
「仏教1.0」の問題点は、ひと言でいうと「形骸化した仏教」ということになります。ほとんどの日本のお寺が「修行をしない仏教」になっていると言われています。
「社会習俗化して、慣習としての仏教になっている。多くの日本人はいろいろな悩みを抱えて生きている。それなのに『仏教1.0』は、そういう心の悩みをきちんと汲み上げて応えてくれない」 というわけです。

 

 2つ目の「仏教2.0」は、「修行している仏教」です。主にアメリカで盛んに行なわれているものです。この仏教ついては、つぎのような問題点を指摘しています。
「特にアメリカでは、修行をテクニックという態度でやっているので、シンキング・マインド(思考・エゴ)で心を無理やりコントロールしようとする傾向が強い。でも 『俺が頑張ってやってやるぞ』 という強為的な態度でいる限り、絶対に到達できない世界(深い禅定)っていうのが、そこにはある」
 つまり、「仏教2.0」は、修行を技術の習得みたいに考えているところに致命的な問題があるということです。
「私たちはシンキング・マインドが自分だとずっと思い込んでいた。けれども、それが自分だと思っている限り、あまりにも辛いことが多すぎる。辛いから瞑想して幸せになろうと思ったんだけど、瞑想もシンキング・マインド主体でやっちゃうから失敗続きで行き詰ってしまう」 という結果になります。

 

 そして最後に、著者が提唱するバージョンアップする仏教=「仏教3.0」です。これからの仏教のあり方を示すもので、この本の中心的なテーマになっています。
 この仏教は、まずシンキング・マインドを手放すことが出発点になっています。少し長いですが、本文中から引用してみます
「じゃあ、それとは別の主体はどういう名前で呼ばれているのかというと、私は『青空』という言い方をします。伝統的な仏教では仏性(本来の自己)とも言います。瞑想の主体は雲(シンキング・マインド)じゃなくて、本当は「青空」のほうなのです」
 ヨガ的に言うと、青空はプルシャ(純粋意識)で、雲はプラクティ(日常意識)ということになるかと思います。

 

 では、「雲」から「青空」へのチェンジは、どのようにして起こるのでしょうか。彼は、初心者には呼吸法よりも体の感覚から入るほうがチェンジしやすいとアドバイスしています。
「シンキング・マインドを手放す方法は、まずリラックスしながら体の微細な感覚を観察することから入ります。なぜなら、体の微細なエネルギーを感じることで、シンキング・マインドが落ちやすい条件ができるからです。微細なエネルギーが満ちている体は、シンキング・マインドが落ちたときに初めて見えてくるんです」

 

 こうして「雲」から「青空」へと主体がチェンジされます。つぎに「青空」が主体になった立場から、呼吸瞑想に移っていきます。鼻腔を出入りする息(呼吸)を「観察」し続けるわけです。その後、「光瞑想」へと導かれ、より深い「禅定」に入っていきます。最終的には、「青空」と完全に一体化した純粋意識の状態が訪れてくると述べています。
 この意識状態にいたるプロセスについて、山下氏がビルマで体験したパオ・メソッド(パオ瞑想法)についての感想が語られています。
「パオ・メソッドに沿ってきちんと実践していけば、実際にその境地を体験できる。つまり実際に経典に書いてあったようなことを全部自分自身で体験できます。私は、そこにまず驚きました」

 

 しかし彼は、瞑想による青空体験を「日常生活において、どう生かしていくのか」が重要であるとも述べています。
「でもそれだけでは十分ではなく、今度は『青空』と『雲』の区別をきちんと心得たうえで、シンキング・マインドをうまく使って日常生活を建設的に生きるという課題が出てきます。シンキング・マインドを手放したままでは普段の生活を生きていけないわけですから。そのときまったく新しいシンキング・マインドの使い方というのが出てこなければいけないはずです」
 ここで初めて「慈悲」という概念が出てきます。
「いままでは『青空のない雲』だけだったから、雲=自分だと見ていた。だけれども、いま完全に雲がなくなった青空をはっきり見た後で、もう一回雲自体が青空から生まれているということが見えてくる。そのとき雲は『青空に浮かぶ雲』になっている。
 このときでもまだこの雲は、過去に青空が見えていなかったときに身につけたクセ(煩悩)で汚れているわけですよね。だからもう一回この雲の浄化をしなきゃいけない。それが『慈悲の瞑想』になるわけです。青空から自分や他者という雲を見たときに、初めて自然な慈悲が生まれてくる。そのときに長い間、自分や他者に対して持っていた感情的な汚れが浄化されていくのです」
「青空」という自己と他者の区別がない境地から見ると、他者(多くの雲たち)は「自分自身」なのです。青空は、すべての雲の「生まれ故郷」です。だから、他者に対しても我が子のように慈悲の心を抱くことができるのでしょう。慈悲は、自然と心の底から湧いてこなければ本物ではないと思います。

 

【おすすめ度 ★★★★】(5つ星評価)



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