[12] プルーフ・オブ・ヘブン──脳神経外科医が見た死後の世界/エベン・アレキサンダー (早川書房)

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 人間は死んだらどうなるのか? あの世は本当に存在するのか?

 この本は、これらの疑問に真摯に答えるために、自らの臨死体験を克明につづった現役医師による手記です。また、これまで死後の世界を否定してきた科学者が見た「天国」の世界について書かれた貴重な記録でもあります。

 

 今までにも、臨死体験の本は世界中で数多く出版されています。しかし、本書のように患者の記録ではなく、医師自身の臨床体験を自らの手で執筆したのは、きわめて異例のことです。しかも、これほど細部にわたってリアルに描くことができたのは、本人自身が体験しているからだと思います。
 著者のエベン・アレグサンダーは、世界トップレベルの医学研究が行なわれているハーバード・メディカルスクールで長年准教授をつとめてきた第一線の脳神経外科医です。
 だから、臨床体験を現実体験と考えるのか、脳内現象とみなすかについて、脳生理学の視点からも検証できる能力を持った人物です。
 その彼が、臨死体験後、次のように述べています。
「私がそこで体験したことは、何もかも──尋常でないほど透徹した光景、純粋な概念の脈動の中で体験した意識の明晰さなど──が脳の高次機能を示唆しており、その逆ではあり得なかった。しかし、高次機能をつかさどる私の脳の領域は、そのとき、完全に機能停止していたのだ。そこで体験した意識の『現実世界』は、脳の物理的な働きから完全に離されていたのである」
 まさに、現代脳生理学の常識を根底から揺るがす現象が起きていたのです。
 アレグサンダーは細菌性髄膜炎を患って昏睡状態に陥り、脳機能が停止してから7日目に、蘇生不可能と言われた状態から奇跡的に生還してきました。その間、彼はあの世の「見学旅行」を体験していたと語っています。

 

 脳神経外科医である彼は、自らの臨死体験を「神経学的仮説」として、脳神経学の視点からも検証を試みています。しかし、いずれも科学的実証からは説明し得る仮説は一つもないことに気づき、最終的に次のような結論に達しています。 
「この体験の正当性を否定する人がいるだろう。この話が“科学的”であり得る可能性を頭から信じようとせず、熱に浮かされた馬鹿げた話と考えて、相手にしない人も多いだろう。
 だがそうではないことを、私は承知している。そしてこの地上と向こうの世界で出会った『存在』たちのために──真理を探究する科学者として、また人を助けることを自ら捧げる医師として、これが本当の話であり、きわめて重要な真実を伝えていることを、できる限り多くの人々に知ってもらう責任があると考えている。この話は私だけではなく、すべての人々にとって大切な意味があるからだ」
 そして、死後の世界についても、次のように述べています。
「この体験に示唆されるものは、言葉ではとうてい表現しきれないほど、とてつもない内容である。脳や肉体が死んでしまっても意識は消えず、人間は死を超えて経験を継続していくことを、私の臨死体験は教えてくれた」
 今後、脳科学の研究が進んで、大脳以外の脳領域(間脳、脳幹、小脳、松果体)について新たな知見が得られ、こうした現象が科学的に裏づけられる日がくるかも知れません。 ただ、現時点では医学の常識を超えた現象であり、第一線の脳神経外科医である著者が「死後の世界」の実在を確信していることは特筆すべきことだと思います。

 

 ご存じのように日本でも、矢作直樹医師が患者のケースをもとに臨死体験について紹介しています。私も興味深く読ませていただきましたが、できれば、もう一歩、患者の内面世界に踏み込んだ内容にしてほしかったと思います。
 彼自身が体験しているわけではないので、つねに第三者の立場から描写しているのは、やむを得ないのかも知れません。その点、本書は医師であるアレグサンダー本人が自らの体験を語っているので、その内容表現は緻密なだけでなく迫力があります。

 

 カール・ベッカー(京都大学教授)も述べているように、第一線で活躍している医師が、医学の常識に反する臨死体験や死後の世界について発言するということは、非常に勇気のある行動と言えます。
 学会から批判されるだけではなく、同僚の医師仲間からも異端児扱いを受ける可能性があるからです。アレグサンダーが、そうしたことを覚悟して出版したということは、よほど自分の体験に強い確信と使命感を持っているからだと思います。
 この本は全米で200万部のベストセラーになり、いまその内容をめぐって激しく論争が繰り広げられています。臨死体験や死後の世界に興味を持っている人は、ぜひ一読されることをお薦めします。今まで出ている臨死体験についての本とは、ひと味違います。

 

【おすすめ度 ★★★★】(5つ星評価)



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