[9] ザ・マスター・キー── ビル・ゲイツに影響を与えた成功哲学書/チャールズ・ハアネル (河出文庫)

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 本書は大ベストセラー『ザ・シークレット』のロンダ・バーンに多大な影響を与えたと言われる本で、ウォレス・ワトルズの『富を「引き寄せる」科学的法則』と並んで、「引き寄せの法則」の古典的名著の一つです。

 この本については、今まで多くの方々が書評で取り上げているので、ここでは特に「潜在意識」と「恐怖」について述べてみたいと思います。
 ハアネルは「潜在意識」と「恐怖」について、次のように述べています。
「潜在意識を信頼することを学んだ人は、無限の能力を欲しいままにでき、光(オーラ)を輝かせるようになります」
「思いを実現するために、もっとも有害なのは恐れです。恐れという悪魔に取りつかれると、人は過去、現在、未来を恐れるだけではなく、自分自身や友人、そしてその敵も、何もかも恐れるようになります。だから、光を輝かせたかったら、最初から恐れないことです」
 つまり、願望を実現するためには、まず「恐怖心を取り除くこと」が前提となること、そのためには「潜在意識に絶対的な信頼をおくこと」を強調しています。
 とは言っても、恐れをつくっている原因も潜在意識の中にあるので、それを信頼して恐れを払拭させるのは、かなり難しいことです。

 

「なぜ人間には、恐怖、不安、怒りなどのネガティブな感情が生まれてきたのか」「その原因はどこから来るのか」──そうした説明をした上で具体的な方法を提示しなければ、すべての人を納得させることはできないと思います。
 なぜなら、ネガティブな思いは長年にわたって、その人の潜在意識に深く刻み込まれており、簡単には消し去ることはできません。潜在意識の中には、バース・トラウマ(出生時体験)やインナー・チャイルド(幼児期体験)などのトラウマ(精神外傷)が根深く刻み込まれているからです。
 大半の人は「ポジティブな思い」の絵に描き替えたつもりでも、その絵の下にはまだ「ネガティブな思い」の絵が消えないで残ってしまうのが普通です。
 彼はこの本の中で「ただ一つの方法は忘れること──つまり他の何かで取って代わらせるのです。繰り返しポジティブな思いを心に保ち続けることです」
と述べているだけです。
 そのための簡単なエクササイズと、そのステップが書かれてはいますが、潜在意識を描き替えるための具体的な方法については、十分に納得できる内容とは言えません。理念化、集中、視覚化の重要性と、それを持続して実行するための「心構え」を説いているだけです。
 ハアネルは楽観的な人だったのか、彼の「引き寄せの法則」を実践して成果を出せない多くの人たちがいても、集中力や努力が足りないとみなして、それ以上深く掘り下げようとはしなかったようです。

 

『ザ・マスター・キー』が出版されたのは1917年ですから、フロイドの『精神分析入門』が刊行された年と同じです。だから、彼はまだ潜在意識についての理論を十分に咀嚼していなかったことも考えられます。
 ただ、彼はヨガの思想に深く傾倒し、自らも実践していたことから考えると、潜在意識をコントロールする方法は身につけていたものと思われます。
 ヨガではグル(導師)とチェラ(弟子)という関係の中で、潜在意識のコントロール法が伝授されるため、なかなか言語化しにくい部分もあります。特に、瞑想(観想法)はヨガの実践の中でも上級に属するテクニックです。
 ヨガの奥義書といわれる『ウパニシャッド』や『ヨーガ・スートラ』(実践書)には、ブラフマン(宇宙我)とアートマン(個人我)の本質的一致(梵我一如)の思想が流れております。『ザ・マスター・キー』の中には、そうした思想があらゆるところに出てきます。

 

 その後、潜在意識に刻まれたトラウマへの具体的な対処法は、シータヒーリング、NLP(神経言語プログラミング)、プロセス指向心理学、催眠療法などの様々な心理療法や精神療法の開発によって補強されてきております。

 

 チャールズ・ハアネルが脚光を浴びるようになったのは、ビル・ゲイツがハ−バード大学在学中に図書館でこの本を見つけ、それに誘発されて起業を決意したという噂が広まったからです。それを契機にシリコンバレーでこの本が大ブームとなり、再版本が続々と刊行されるようになったのです。

 

【おすすめ度 ★★★】(5つ星評価)



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