[67] 遺伝子は変えられる/シャロン・モアレム(ダイヤモンド社)

 あなたは、こんな疑問を持ったことがないだろうか?

「友人から体にいいと勧められたサプリや食事法を続けているが、とくに調子がよくなったとは感じられない。友人にはよく効くのに、なぜ私には効果がないのか。
 サプリや食事法だけではない。同じ薬を服用しているのに、よく効く人とさほど効かない人がいる。副作用についても、強く出る人とまったく出ない人がいる。どうしてだろうか?」
──こうした場合、私たちは単純に「個人差」だと思うでしょう。あるいは「代謝酵素の働き」の違いと考えるかも知れない。
 本書では、そうした「個人差」や「代謝酵素の働き」の違いがどうして起きるのか、その原因を遺伝子レベルから、様々な事例を挙げながらわかりやすく解説しています。

 

 著者は次のような事例を引用して説明しています。
「ニューヨーク在住のジェフという男性は、動脈硬化を改善するために、医者からたくさんの果物と野菜を食べるように勧められた。
 そこで彼は毎日果物を食べ続けたわけですが、摂取した果糖は体内で分解されず、毒性代謝物が肝臓に蓄積するようになった。その結果、彼は動脈硬化は治ったが、肝臓がんになってしまったのだ」
 どうして、こんなことになってしまったのか。
 あとで遺伝子検査をしてわかったことですが、じつは彼は「遺伝性果糖不耐症」という遺伝子疾患を抱えていたのです。そして、その遺伝子が果物の摂取によって発現してしまったというわけです。
 このことは、いくら栄養学的にいいと言われている食品でも、それが遺伝子的に不適合のものならば、逆にマイナスになってしまうことを示唆しています。

 

 上記のジェフの場合は極端な例かも知れませんが、じつは、遺伝子レベルから見ると、あなたもジェフと同じだというのです。
 私たちはみな、ひとりひとり異なった遺伝子を持っており、その中には何らかのタイプの変異が必ず見つかるそうです。これが「個人差」と言われているものです。だから、著者は万人に効く食習慣はないと述べています。
 一般的に遺伝性果糖不耐症を抱える人は、人生のある時点で自然に果糖が大嫌いになる人が多いと言われます。そして自分でも理由がわからないまま、この種類の糖を含む食品を避けるようになるのです。
 だから、なんとなく直感的に違和感を感じる食べ物は、無理に摂取しないほうがいいのかも知れません。

 

 それでは、私たちは親から受け継いだ遺伝子から完全に自由になれないのでしょうか。良くも悪くも、ただ受け入れるしかないのでしょうか。それに対して、著者は次のように述べています。
「遺伝子疾患を抱えていても、スイッチがオンにならない限り、その遺伝子が発現するとは限らない。あくまでも、その可能性があるということだ。
 もっと重要なことは、あなたのDNAは常に改変され続けているという事実だ。あたかも何千という小さな電球の個々のスイッチが、あなたがやっていること、感じていることに応じて、オンになったり、オフになったりする。このプロセスは、あなたがどのように暮らすか、どんなストレスを被るか、何を食べるかなどによって仲介され、調整される。つまり、あなたは遺伝子的に変わることができるのだ」

 

 私たちの運命は、遺伝子によって決められているわけではないのです。このことは、ミツバチの例を見ても理解できます。
 じつは、女王蜂と働き蜂の幼虫はもともと同じ卵から生まれて、なんの違いもありません。DNAもまったく同じです。それが、なぜ違ってくるのかというと、女王蜂になる幼虫だけが特別なエサ(ローヤルゼリー)を食べて育ちます。それによって、特定の遺伝子をオンやオフにすることによって、発現に変化が起きるのです。
 これはミツバチの例ですが、じつは人間の遺伝子でも似たようなことが起きているのです。双子のように同じ遺伝子を持って生まれてきても、その後の生活習慣(食事など)によって運命はまったく異なるものになります。

 

 著者は、エピローグで次のように言っています。
「遺伝的強みとは、ただ自分より前の世代から渡された遺伝子を受け取ることによってしか得られないものではない。それは、自分が受け取ったもの、そして自分が与えるものを変えるチャンスからも生まれる。そして、そうする中で、ぼくらの人生の道のりはまったく別のものになりうるのだ」
 著者が語るように、遺伝子というのは、すでに書き終わり、編集され、出版された本ではなく、それは今も書き綴っている物語なのかも知れません。

 

【おすすめ度 ★★】(5つ星評価)


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