● [64] ただ生きていく、それだけで素晴らしい/五木寛之 (PHP研究所)

「人は、誰しも悩みや苦しみを抱えて、人生を歩んでいます」(まえがき)

──生きるということは、いつも喜びと幸せにあふれているとは限りません。トラブルや不幸に見舞われ、どん底に突き落とされることもあります。本書は、そうした人生の局面で、生きづらさを感じる人や、未来への不安を感じている人々に向けて語られた著者からのメッセージ集です。

 

 最近、悩んでいることがあって、ふらふら散歩をしていたら、偶然立ち寄った書店で見つけた本です。さっそく近くの喫茶店で読んでみたのですが、なぜかホッとした気持ちになりました。なぜでしょうか?
 過酷な少年時代を生き抜いた著者は、自らの体験から、一時的な慰めや、その場かぎりの安心は何の役にも立たないと感じていたのでしょう。心の奥底から安心してほしいと願う著者の気持ちが伝わってくる本です。
 なかでも印象に残ったメッセージが二つありましたので、次に掲げてみました。

 

 一つめは「ネガティブ思考から、真のポジティブ思考が生まれる」というメッセージです。
 著者は、どん底に突き落とされ、弱りきった時に「人生には無限の可能性がある」「夢は必ず実現する」といったポジティブ思考は、何の役にも立たないと言っています。
「生きていれば、誰しも、不幸な出来事や死にたくなるような情けない局面に直面することがあります。そんな時は、自分に一生懸命言い聞かせても、頭に入ってきません。我を失うほど次々と襲いくる不運という現実の前に、そのような言葉はまず響きません。私はそんな時、徹底したネガティブ思考でしのいできました。『人生とは苦しみの連続である』と覚悟を決めるのです」
 普通は、こんな時こそポジティブ思考で切り抜けようとしますが、著者は、無理にそれに対抗しないことを勧めています。むしろそれを引き受け、居直ってしまうほうがいいと述べています。
「居直るということは、覚悟を決めたということです。そうすると、その諦念の底から、かすかに湧いてくる力がありました。『それしかないなら、引き受けるしかないな』という居直りのエネルギーです」
 ネガティブ思考を突き詰めていくと、いつか底を打ち、そこから新しい力が生まれてくる。このエネルギーは、捨て身で覚悟を決めた心から生まれてきているので、相当に強いものです。彼は、これこそ真のポジティブ思考ではないかと言っています。

 

 もう一つは「他力の風を感じてみる」というメッセージです。
 他力の風(他力本願)というと、努力せずに他人の力をあてにするといったようなマイナスのイメージで使われることが多いようです。しかし、本来の「他力」は「あなた任せ」の思想ではないと次のように述べています。少し長くなりますが引用させていただきます。
「例えば、海原でヨットに乗っているとします。風が吹いてくれれば走りだせますが、それまでは待つしかありません。帆を張り、雲の様子を観察し、風が吹くと信じてそのチャンスを逃さぬよう待ち受けなければなりません。風の向きを予想して、帆を傾けたり大きさを加減する必要もあるかもしれません。考えうる限り、できる限りのことをする。しかし、大自然の前ではもう何もすることがない。そうわかった時、その考えに気づいた時こそ『他力』の風を感じられるチャンスです」
「『人事を尽くして天命を待つ』という言葉があります。『人事を尽くそう』『精いっぱいやりきろう』そんなふうに思えたこと、それはなぜでしょうか。いつもなら、『面倒くさいから適当に済まそう』『無理だ、自分にはできない』、そんなふうに思うかもしれないのに、なぜか覚悟を決められた、その点に注目したいのです。それこそが『天の命』ではないか」

 

 五木寛之氏は、今年で84歳になったそうです。彼が尊敬している親鸞は90歳。余談ですが、念仏系の人はなぜか長生きしており、親鸞90歳、法然80歳、蓮如80歳と、当時としては大変な長命です。それに比べて、他宗派の僧侶は、道元が53歳、日蓮が60歳、空海60歳とそこまで長く生きた人はいません。何か理由があるのでしょうか (^-^*)

 

【おすすめ度 ★★★】(5つ星評価)



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