[62] インターネットの次に来るもの/ケヴィン・ケリー(NHK出版)

 著者のケヴィン・ケリーは、若い頃、ヒッピー生活をしていたことがあり、コンピュータやハイテクに強い不信感を抱いていたという。その彼が、いまやシリコンバレーの技術者たちから「デジタルカルチャーの予言者」と呼ばれ尊敬されているのですから皮肉なものです。

 いったんはテクノロジーを拒否したケリーだったが、その一方で個人の力を拡大させるテクノロジーの魅力に次第に引き寄せられていきます。
 その後、テクノロジーへの反感と嗜好のジレンマを克服しようと、「もともとテクノロジーとは一体何だったのか」という根源的な疑問を抱くようになります。そして、7年間にわたってその答えを探し求めた結果、彼はテクノロジーの本質は、宇宙から生物、知性へと続く「進化」の過程で必然的に生まれてきたものだと確信します。

 

 本書では、最新のテクノロジー──なかでもインターネットとウェブ、モバイルの融合したシステムが、どのようなプロセスを経て進化していくのかを明らかにしていきます。彼はこれから30年の間に、私たちの生活に劇的変化をもたらすテクノロジーは、すべて「12の不可避な進化」の方向性から読み解くことができると述べています。

 

「テクノロジーの性質そのものに、ある方向に向かうけど他の方向には行かないというバイアス(傾向)がある。基本的にこうした傾向は、テクノロジー全体を規定する物理的・数学的な法則であり、ある種の振る舞いを好む傾向があるのだ」
 そして、この本を書いた目的を次のように語っています。
「われわれのテクノロジーが向いている方向に耳を傾けることで、その基本的な傾向に合わせた期待やプロダクトを作ることができ、そのテクノロジーの恩恵を最大限に引き出すことができる。本書の目的は、これら最新のテクノロジーに作用する傾向を集めて、その軌跡を目の前に並べてみることだ」

 

「AI(人工知能)が電気のように日常を流れ、VR(仮想現実)はスマートフォンのような存在になる。今後30年間に起きるプロジェクトやサービスの一般的なトレンドについては、いまでも見えている。その基本形は、いままさに世界中に行き渡りつつある新しいテクノロジーの方向性に根ざしている」
 この方向性こそ、本書のテーマにもなっている「12の不可避な進化」を促がす推進力から生まれてくると述べています。
 その「12の法則」から見えてくる未来の具体的な内容をすべてここで紹介することはできませんが、私が印象に残っているいくつかの「未来のトレンド」を次に列挙してみます。

 

「私の予想では、2026年までにグーグルの主力プロダクトは検索ではなくAIになるはずだ」

 

「どんな巨大企業でも、一社で運営するクラウドの成長規模には実際には限度があるので、今後のクラウド時代の次の段階では、クラウド同士を融合したインタークラウドができるだろう」

 

「情報の共同体を一つの国だと考えると、フェイスブックは地球上で最大の国だ。しかもこの最大の国の経済は、無給の労働で支えられている。10億の人々が、無償のコンテンツ作りに毎日多くの時間を費やしている。群衆によるシェアを上手く利用すれば想像以上のことができるのだ。これからの30年を考えると、最大の富の源泉──そして最も面白い文化的イノベーションはこの方向の延長線上にある。2050年に最速で成長し、一番稼いでいる会社は、いまはまだ目に見えず評価もされていない新しいシェアの形を見つけた会社だろう」

 

「すべてがゼロに向かっていく中で、唯一コストが増加しているのは人間の経験だ──それはコピーできない。それ以外のものはすべて、コモディティ化しフィルターをかけられるようになる。経験を創造したり消費したりするのに人間が優れているのも偶然ではない。そこにロボットが出る幕はない。ロボットがわれわれのいまの仕事を奪ったらいったい何が残るか知りたいなら、経験に注目するとよい」

 

 さすがに30年もの間、オンラインの世界のパイオニアとして生きてきた経験をもとに語られた「予言」だけあって、いずれも説得力を持った言葉だと思います。

 

【おすすめ度 ★★★★】(5つ星評価)



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