[55] 体をみれば心がわかる──ボディトークの世界/増田明(創元社)

 一般的に、私たちは自分の内面(心の世界)は、他人からは見えないと思っています。心の動きは、自分ではわかっているのに他人にはわからない、そう考えているようです。

 しかし、著者によれば、自分しかわからないと思っている心の動きは、すべて体に正直に表われると述べています。
「心で思うことや頭で考えること、体で感じることは、それを隠しているつもりでも、その一端がポロッと外へ漏れてしまうことがある。その時、私たちは人の内なる世界を垣間見ることができるのだ」

 

 では、そうした心の動きは、どのように外に表われるのでしょうか。著者は本の中で、お弟子さんである或る母親の面白いエピソードを紹介しています。
「大学生の息子が帰宅するなり、ドタッと寝転んだ。『しんどいの? ちょっと体をほぐそうか?』と言って、母親は息子の背中に触れて、軽く揺すった。すると彼の肩身、すなわち肩甲骨と肩甲骨の間だけが柔らかい。母親はピンときた。『あれ、好きな人ができたのかな?』と言った。息子は立ち上がって、『母さん、なんでわかるの?』と叫んだ」
 これは、体に触れて心に気づく一つの例だという。ちなみに、右が柔らかければ、惚れた方、左が柔らかければ惚れられた方。彼の場合は両方柔らかかったので、相思相愛というわけです。このことは、著者が多くの若者の背中に触れて、経験的に知ったことだと語っています。

 

 著者によれば、息子の例のように喜びの感情は体を弾ませる(柔らかくする)そうです。しかも、体のどの部分が柔らかくなっているかで、どんな感情が影響しているのかもわかるというから驚きです。
 逆に、悲しみや苦悩は体を収縮させ、シコリを作ったり、歪めたりすると言っています。
「人は心に悩みが生じると、脳に苦しみのイメージを作り、その苦しみに対応する筋肉の、ある部分を収縮させる。不快なものを見ると、眉の付け根が縮んで、いわゆる『眉を曇らせ』たり、不平不満があると『口をとがらせ』たり、おびえると仙骨を内に引っ張ったりするのだ」
 この本のタイトルにもあるように「体をみれば心がわかる」というわけです。

 

 しかし、なかには悲しみや苦悩によって、うつ症になり、自力では立ち直ることが困難になるケースも出てきます。少し長くなりますが、引用させていただきます。
「失恋であれ、家族の死であれ、悲しみのイメージが脳裏に飛び込んでくると、悲しみの感情は意識の中で漂い始める。水面上を意識の世界、水面下を無意識の世界とすると、悲しみのボールが水面上に浮かんでいる時は、ヒトは感情を露わにする。この時点では悲しみから生じる体のしこりもほぐしやすいのだが、悲しみがさらに重たくなって、ボールが水面下へ沈み始めると大変だ。悲しみのボールを意識の世界へあげないようにし始めるからである。そして体の感覚を鈍くして悲しみを感じないようにしていく。この状況をボディートークでは『体に鍵をかける』という。そうしてしっかりと水面下に押さえ込まれた悲しみのボールが、自らもジッとして動かなくなる。すなわち悲しみの感情も意識に上げないようにすることを『心に鍵をかける』といっている」

 

 本書は、「体を通して心に気づく」ことを、ボディートークという視点から、わかりやすく解説しているばかりでなく、こうした「心に鍵をかけてしまった」人たちをボディートークの手法を使って、数多く救ってきた事例も紹介されています。ぜひ、一読をおすすめします。

 

【おすすめ度 ★★★】(5つ星評価)


関連ページ

[1] エンデの遺言/河邑厚徳+グループ現代
[2] 「原因」と「結果」の法則/ジェームズ・アレン
[3] 富を「引き寄せる」科学的法則」/ウォレス・ワトルズ
[4] 流れとかたち/エイドリアン・ベジャン
[5] 唯識十章/多川 俊映─
[6] 2045年問題/松田卓也
[7] トランスパーソナルとは何か/吉福伸逸
[8] 一流人たちの感性が教えてくれた「ゾーン」の法則/志岐 幸子
[9] ザ・マスター・キー/チャールズ・ハアネル
[10] 禅と食/枡野 俊明
[11] プロセス指向心理学/アーノルド・ミンデル
[12] ルーフ・オブ・ヘブン/エベン・アレキサンダー
[13] 異次元は存在する/リサ・ランドール
[14] ザ・シークレット/ロンダ・バーン
[15] 宇宙瞑想/横尾忠則対談集
[16] アップデートする仏教/山下良道、藤田一照
[17] ザ・ゲート/エリック・パール
[18] 100万回生きたねこ/佐野洋子
[19] 神様のホテル/ビクトリア・スウィート
[20] 風邪の効用/野口晴哉
[21] わら一本の革命/福岡正信
[22] ネイティブ・マインド/北山耕平
[23]生きる。死ぬ。/土橋重隆、玄侑宗久
[24] あわいの力/安田 登
[25] 里山資本主義/藻谷 浩介
[26]しらずしらず/ムロディナウ
[27] すべては宇宙の采配/木村 秋則
[28] 奇跡の脳/ジル・ボルト・テイラー
[29] 祈る心は、治る力/ラリー・ドッシー
[30] 脳の神話が崩れるとき/M・ボーリガード
[31] なぜ、これを「信じる」とうまくいくのか/マシュー・ハトソン
[32] 超常現象 科学者たちの挑戦/NHK取材班
[33] 皮膚という「脳」/山口 創
[34] 魚は痛みを感じるか?/ヴィクトリア・ブレイスウェイト
[35] 食品の裏側──みんな大好きな食品添加物/阿部 司(東洋経済)
[36] 「臨死体験」が教えてくれた宇宙の仕組み/木内鶴彦(晋遊舎)
[37] かもめのジョナサン完成版/リチャード バック(新潮社)
[38] 「ビジネスゲーム」から自由になる法/R・シャインフェルド(VOICE)
[39] 思考のすごい力/ブルース・リプトン(PHP研究所)
[40] 脳科学は人格を変えられるか?/エレーヌ・フォックス(文藝春秋)
[41] がんが消えた──ある自然治癒の記録/寺山心一翁(日本教文社)
[42] 体の知性を取り戻す/尹 雄大(講談社現代新書)
[43] 宇宙のパワーと自由にアクセスする方法/ディーパック・チョプラ(フォレスト出版)
[44] 腰痛は怒りである──痛みと心の不思議な関係/長谷川淳史(春秋社)
[45] 野生の体を取り戻せ!/ジョン J・レイティ、リチャード・マニング(NHK出版)
[46] がんが自然に治る生き方/ケリー・ターナー(プレジデント社)
[47] 打てば響く/竹村文近、大友良英(NHK出版)──音の力、鍼の力
[48] 病は心で治す──健康と心をめぐる驚くべき真実/リサ・ランキン(河出書房新社)
[49] フューチャー・オブ・マインド──心の未来を科学する/ミチオ・カク(NHK出版)
[50] 目の見えない人は世界をどう見ているのか/伊藤亜紗(光文社新書)
[51] 仏教思想のゼロポイント──「悟り」とは何か/魚川祐司(新潮社)
[52] 世界の中にありながら世界に属さない/吉福伸逸(サンガ)
[53] ONE──「1つになる」ということ/加藤秀視(徳間書店)
[54] 食べない人たち──「不食」が人を健康にする/秋山佳胤、森美智代、山田鷹夫(マキノ出版)

●トップページ ● 書評 精神世界の本 ベスト100 ● スピリチュアル書店 ● 出版社&WEBマガジン ● トピックス