[49] フューチャー・オブ・マインド──心の未来を科学する/ミチオ・カク(NHK出版)

 今月からTVドラマ『アルジャーノンに花束を』が放映されていますが、ミチオ・カク(ニューヨーク市立大学物理学教授)は、この原作の小説(ダニエル・キイス/著 1959年)について、次のように述べています。
「当時、この小説は高い評価を得たが、内容は純然たるSFと片づけられた。筋立ては胸を打ち独創的(感動的)だが、知的障害の主人公の知能を手術によって高めるというアイデアは荒唐無稽と見なされたのだ。脳細胞は再生できないから、この小説の筋立てはどう考えてもありえない、と当時の科学者たちは言ったのである。
 だが、いまやそうではなくなっている。電磁センサーや遺伝学や幹細胞の領域で急速な進歩が起きていて、近い将来、テクノロジーは我々に知能を高める力も与えてくれるだろう」

 

 だから、現在の我々から見れば、この物語は決して荒唐無稽ではなく、現実に起こり得るストーリーなのだと言っています。
 すでに超人的能力を持つ「自閉症サヴァン」の脳科学研究や、幹細胞あるいは光遺伝子技術などの進歩によって、実際に知力の向上やコントロールが可能になりつつあるのです。そして、知力ばかりでなく、以前は夢物語と言われてきた様々なテクノロジーが次々と実現されようとしていると語っています。少し長くなりますが、引用させていただきます。

 

「今後数十年で、神経科学の威力は爆発的に増す可能性がある。現在の研究は、息をのむような科学の新発見を目前にしている。映画の『マトリックス』のように、我々もいつか、コンピュータを使って記憶や技能をダウンロードできるようになるかもしれない。動物実験では、すでに脳に記憶を挿入できている。
 また、日常的に身のまわりの物を心の力で操り、脳をニューロンひとつひとつに至るまで把握し、脳のバックアップ・コピーをとり、テレパシーで互いに意思疎通を図るようになるかもしれない。未来の世界は、心の世界になるのだ。
 さらに、いつか遠い未来には、心が身体の制約から解放され、星々のなかを旅するようになるだろう。今から何世紀か経てば、我々の神経の設計図をすべて、レーザービームにのせて宇宙へ送っていることも考えられる。もしかしたらそれが、我々の意識で星々を探査する最も便利な方法かもしれない」

 

 確かに、昔はSFの世界だったテクノロジーが現実となり、今では多くの人たちの間で利用されています。ドラえもんの秘密の道具だって、実現される日がくるかもしれません。
 我々が思考(イメージ)する世界が、テクノロジーの進化によって現実化しつつあるともいえます。
 ただ私は、テクノロジーは必ずしも対象を全体的に把握して開発されるものではなく、常に部分的であることから、トレード・オフ(何かを達成するために別の何かを犠牲にしなければならない関係)は避けられないと思っています。アルジャーノンの知性のように、代償なしに何かを得ることは難しいのではないかと考えています。

 

 最後に、著者が「あとがき」で、科学の進歩と神秘性について述べています。
「科学に対して、『何かを理解すると、その神秘性が奪い去られてしまう』という批判がある。科学は、心の秘密を覆い隠しているベールを持ち上げることで、心を平凡でありふれたものにしている、というのだ。
 だが、それは違う。脳の純然たる複雑さを知るほど、我々の肩の上にあるものが、知られているかぎり宇宙で最も精巧なものであることに驚かされる。そして驚きの念は、弱まるどころか、脳を知ることで強まる一方だ」
 どんなにテクノロジーが進歩しても、人類にとって「宇宙」や「心」の神秘性は永遠に残り続けるのかもしれません。

 

【おすすめ度 ★★★】(5つ星評価)


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