[47] 打てば響く──音の力、鍼の力/竹村文近、大友良英(NHK出版)

「私は、患者さんに触って鍼(はり)をひと刺ししたら、その人の身体のリズムだけではなく、生活環境や性格、生き方まで見えてきます」

 これは、本書の中で竹村氏(鍼灸師)が語っている言葉です。
 なぜ、彼には患者さんの「生き方」までが見えるのでしょうか。竹村氏は、診察の際に患者さんのどこを見ているのでしょうか。彼は、次のように説明しています。

 

「鍼灸は、まず気配を感じること。診察は、玄関の扉を開けたときから始まっています。患者さんが一階の待合室から二階の診察室に向かう階段の足音を聴くことも診察の一環です。どんな足音なのか、手すりにつかまっているのかいないのかなどで、患者さんの調子は、ある程度分かります。
 次に、診察室に入ってきたときに全体のシルエットを見て、声のトーンや口調を確認します。洋服や靴下を脱ぐ様子を見ます。腰のかがめ方や足の上げ具合などを観察すると、身体のバランス状態などの情報が入ってくるのです。
 そして、患者さんが治療台に乗って、うつぶせになったときに腰とうなじを見ます。そのときに、その人の身体のリズムというか、生活のリズムや育ってきた環境が大体分かるのです。気性や性格も身体に出ています。まさに身体は地図で、その人の生きてきた歴史、仕事への打ち込みようが刻まれています。どんな生活をしてきたのか、趣味や楽しみは何かなど、育ってきた過程と現状が見えてきます。その人の持つ身体のリズム(気)が自然な形で私の中に入ってくるのです」

 

 どうやら彼は、患者さんの「気配」を感じる達人のようです。症状が出ている部分だけではなく、患者さんから発せられるあらゆる信号をキャッチしているわけです。そして、身体のリズム、つまり「気」(生命エネルギー)の乱れの原因を探っていきます。
 大友氏(音楽家)も「治療を受けると全部を見透かされてしまうようで、なんだかバレちゃうようで怖いです(笑)」と語っています。
 竹村氏は「こうした能力は、決して知識として教えられるものではありません。患者さんの身体に直接触れて学ぶしかない」と述べています。人間の身体は十人が十人、誰ひとりとして同じではないということ。実際の臨床では絶対といっていいほど、教科書通りにはいかないこと。だから、一人でも多くの患者さんの身体に触れることが重要なのだと力説します。

 

 本書の著者は、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の作曲で知られる大友良英氏と、芸能界・文学界・スポーツ界の著名人たちが、お忍びで通っているという鍼灸院の竹村文近氏。ジャンルの異なる達人同士が「生命の根幹にあるリズム」についての思いを、それぞれの体験を交えながら語り合っています。
「重要なのは、実はリズムというのは、歩くことや呼吸、心臓の音など、あるいは朝昼夜のリズムとか、そういうものからきてるってことです」(大友氏)
「鍼灸治療で鍼を打つ動作は、リズムがとても重要なのです。呼吸のリズムに合わせて鍼を打ちます。治療は一つのリズム、動作は一つのリズム、リズミカルに“気"を見ながら打つ。鍼灸治療は、何もかもがリズムにつながっているような気がします」(竹村氏)
 一見共通点がないように思える音楽家と鍼灸師ですが、この二人を繋げるものは「根源的な生命のリズム」に関わる何かのようです。

 

【おすすめ度 ★★★】(5つ星評価)



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