[45] 野生の体を取り戻せ!/ジョン J・レイティ、リチャード・マニング(NHK出版)

「長生きしても、寝たきりの老後生活は送りたくない」
 誰もが口をそろえて、そう言います。
 たしかに日本人の平均寿命(男79.64歳、女86.39歳)は年々延びてきています。それに比べ、健康寿命は平均寿命より男性は約9年、女性は約12年短かいのです。この期間は、自立して生活できない年数になります。男性は平均70歳まで、女性は74歳までしか健康状態を維持できないことを示しています。つまり、長生きをしても、寝たきり(要介護)の老人が多くなってきているのです。これでは、いくら長生きできるようになったからといって、喜んでもいられません。
 ちなみに、日本人の死因の60%以上の人が、がん・心臓病・脳卒中などの生活習慣病で亡くなっています。たとえ死に至らなくても、長期間にわたって患うことになるので、寝たきりになることが多いのです。こうした傾向は日本だけではなく、先進諸国の共通の課題となっています。

 

 著者のレイティ(ハーバード大学教授)は、これらの問題を解決するには、その原因を生態系(生物進化)の視点から捉え直さなければならないと言っています。
「私たちが『病気』と呼ぶものは、ほんとうは『文明がもたらす苦しみ』と呼ぶべきなのかもしれない。それらは人体の設計上の欠陥や傷ではなく、私たちが日々の暮らし方によって自ら招いた損傷だ。世界中で、生態系を立てなおして野生のシステムを復活しようとする気運が高まっている。ヨーロッパではそれを『再野生化(rewilding)』と呼ぶ。野生の生態系と同じく人体も、多様な微生物が共存する生態系なので、自然な状態に戻したときにこそベストの働きをするはずだ。ゆえに筆者は本書を、読者の生活スタイルを再野生化する指南書にして、ライフスタイルを変える考え方の入門書として著した」
 彼のいう「野生」とは、何百万年にもわたって築いてきた「進化の知恵」を意味しています。それは遺伝子に深く刻み込まれており、たかだか1万年前以降に生まれた文明の知恵をはるかに超えています。私たちは野性的に暮らすように進化によって設計されているのです。

 

 彼は「野生」生活をしていた先住民(狩猟採集民)には、生活習慣病で亡くなる人はほとんどいなかったと言っています。
「じつのところ、がんは最初の文明病なのだ。20世紀初頭の時点で多くの北米、オーストラリア、アフリカなどの先住民(狩猟採集民)の間では、がんは『きわめてまれ』な病気だった。また、心血管疾患、高血圧、2型糖尿病、関節炎、乾癬、虫歯等が先住民には見られないことだった。そして、欧米の食事とライフスタイルを受け入れた先住民のその後を調べた研究では、彼らもやはり文明病を発症するようになっていたのである。
 また、いくつかの緻密な研究により、木の多い地域ではがんなどによる死亡率が低いことが示されたのだ。自然との触れ合いが免疫力を高めることを示す数々の研究の結果と一致した。ただ自然に触れるだけで病気への抵抗力が高まるということが実証され、計測されたのだ」
 いくら文明が進歩しようとも、私たちの体は20万年前から変わらないのです。だから、文明によって生物進化のルール(野生)を無視すれば、しっぺ返しを受けるのは当然のことかもしれません。人間は自然から遠ざかるほど病気になる。いまこそ「野生の体を取り戻せ!」というわけです。

 

【おすすめ度 ★★★】(5つ星評価)



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