[44] 腰痛は怒りである──痛みと心の不思議な関係/長谷川淳史(春秋社)

「95%の腰痛は心身症である。痛みの原因は身体の異常ではなく心にある」 と言われたら、あなたは信じますか? 

 これは、ジョン・サーノ博士(ニューヨーク大学医学部教授)が長い臨床試験の中から導かれたTMS(緊張性筋炎症候群)理論と呼ばれるものです。
 本書の著者である長谷川氏は、TMSについて次のように述べています。
「サーノ博士によれば、TMSは日常生活上のストレス、幼少期のトラウマ、完全主義や善良主義による内的葛藤から生まれた怒りが原因です」
 つまり、腰痛は心因性の病であり、TMSの発症には不快な感情(怒り)の抑圧が関与していると考えるのです。
「強烈な痛みを起こすことで、強引に意識の焦点を怒りから背けさせるのです。したがって、抑圧された怒りが強いほど、TMSは重症になるわけです」
 それは腰痛ばかりではなく、五十肩や背中の痛みをはじめ、肘、膝などの関節痛にいたるまで、すべては共通した原因によるひとつの症候群(TMS)だというのです。

 

「痛みの直接的原因は血流不足によって起こる一時的な酸素欠乏ですが、感情の抑圧によるストレスがそれを引き起こすのです」
 痛みの根本原因は身体それ自体にあるのではなく、ストレスという心の作用が関与して起ると考えるのです。
 もちろん、腰痛の大半が心因性とはいえ、ごくまれに悪性腫瘍や内臓疾患、感染症、圧迫骨折などの重大な器質的疾患が原因になっている場合があります。だから、長谷川氏は念のためにレントゲン検査や血液検査などを受けることを勧めています。

 

 一般的に腰痛は、老化現象、筋力低下、不良姿勢などが原因と言われてきました。なかには直立歩行する人類の宿命ではないかと言ってる人もいます。いずれにしても、従来の治療の基本は身体の構造的異常を治すという発想です。本書のTMS理論のように、心身症として捉えるということはありませんでした。
 著者は、身体的な背骨の変形も骨盤のズレも腰痛の原因ではないと断言します。
「こうした見かけ上の背骨の変化と腰痛が無関係だということは、専門家の間ではすでに周知の事実です。椎間板ヘルニアについても同様です。マイアミ大学のロゾモフ教授は『椎間板ヘルニアが痛みを引き起こす可能性は、全体の3パーセントにも満たない』と述べています」
 つまり、腰痛は従来から言われているような身体の構造的な異常から起こっているのではないというわけです。

 

それでは、こうした痛みに対して、どのように対処したらいいのでしょうか? 腰痛は怒りが原因だとしても、感情を抑圧せずに怒りを消す方法があるのでしょうか。
 それについて、彼は次のようにアドバイスしています。少し長くなりますが、引用させていただきます。
「怒りと仲良くなるのです。身体の症状のことは気にせず、まずは、自分の中に怒りがあることを認めましょう。自分の中の感情を、判断することなく、ありのままに受け入れてみてください。TMSを解決させるコツは、痛みを感じたとき、怒りとその理由について考えることに尽きます。身体に注意を奪われることなく、心に注意を向ける習慣を身につけることが、重要なポイントです。
 TMSが発症するのは、怒りに気づいていないからです。ならば、その怒りの根源となり得る出来事を明らかにし、抑制または抑圧された怒りをしっかり確認できれば、その作業自体が強力な治療法になるはずです。自分はこの問題に悩んでいる、腹を立てている、憤慨しているということを、どんな価値判断も加えずに認めて受け入れるのです。自分を責める必要はありませんし、TMSを完治させるためには、問題を取り除く必要もありません。問題の存在、怒りの存在にただ気づいているだけでいいのです」

 

 TMS理論を提唱したサーノ博士の本が翻訳されてます。こちらのほうも、ぜひ一読してみてください。
『サーノ博士のヒーリング・バックペイン―腰痛・肩こりの原因』
ジョン・サーノ/著 浅田 仁子/訳 長谷川淳史/監修(春秋社)1999年
『心はなぜ腰痛を選ぶのか──サーノ博士の心身症治療プログラム』
ジョン・サーノ/著 浅田 仁子/訳 長谷川淳史/監修(春秋社)2003年

 

【おすすめ度 ★★★】(5つ星評価)



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