[41] がんが消えた──ある自然治癒の記録/寺山心一翁(日本教文社)

 一般的に体験談の本は、著者の実際の体験以上に大げさに誇張されてしまう傾向があります。ちょうどテレビ番組の生放送と編集された収録番組の違いのようなものです。

 私は過度に編集加工された本やテレビ番組は、あまり信用しておりません。著者の体験内容を部分拡大して、ドラマチックに仕立てあげてしまうからです(もっとも本を売るためには、こうした編集技術が必要になってくることが多いのですが)。
 今回紹介する本は、私が読んだ印象では、編集者が手を加えた割合が比較的少ないような気がします。そのことが、かえってこの本の信憑性を高めている大きな要因になっています。
 本書には、体験記にありがちな誇張や奇をてらった表現はなく、文章の隅々に著者の誠実な人柄が伝わってきて、非常に好感の持てる本だと思います。

 

 この本は、余命いくばくもないと思われていた“がん患者"の発病から消滅までを克明につづった生きた記録です。手術後の抗ガン剤、放射線治療で衰弱した彼は、自宅で死を迎えるために退院。その後、現代医学に見切りをつけ、様々な代替療法を統合的に取り入れ根気よく実践していきます。やがて彼の「生命力」は蘇り、がんが自然治癒していったのです。
 詳細については、私が解説するよりも実際に読んでいただくほうが正確に伝わると思います。ここでは、彼がこの本を書くきっかけについて「エピローグ」で述べているので、少し長くなりますが引用させていただきます。

 

「この本を書き始めてから、ほぼ3年の月日が既に過ぎてしまった。
 本を書くきっかけは、自分のがんが少しずつ癒され治っていった過程を、そのときに自分が感じたことをもっと深く突っ込んで思い出しながら詳しく書いてみれば、きっとがんで苦しむ人たちのなかで、自分が中心になって自らのがんを癒そうとしている人々や家族にとって、大変参考になり役に立つと思ったからだ。
 今の科学を駆使した遺伝子の研究や治療方法には科学的データの蓄積があり、測定技術にすぐれた医学ではあるが、現代の西洋医学は、あまりにも局所的で部分的で、がんの治療法がいまだに手術、抗がん剤、放射線治療という『殺す・たたく』ことを主体とする治療体系であるからだ。
 病気になったとき健康保険が適用される西洋医学の病院に行く習慣になっている人々が、病院で医師から診断結果がんと宣告されて、説明された副作用の強い治療法を前にして、心もそぞろで右往左往しているとき、自然との係わり合いを持ってがんが自然に癒されていったという私自身の治癒の過程が書かれたものを読むことは、がん患者本人にとってもとても心強いことだと思った。
 さらには意識の面まで詳細を深く書き記した私の体験を読むことで、とりあえず安心して自分を取り戻し、がんは自分が作ったものであり、自分が責任を取り、自分が中心になって生活習慣を変えていけば、治っていく可能性もあることを知ることができると思ったからだった」
 けっして歯切れのよい文章とはいえませんが、著者の誠実な人柄がそのまま表れており、この体験記が「本物」であることが伝わってきます。ぜひ一読をおすすめします。

 

【おすすめ度 ★★★★★】(5つ星評価)



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