[38] 「ビジネスゲーム」から自由になる法/R・シャインフェルド(VOICE)

 この本は内容があまりにも荒唐無稽に見えるので、なかには「ばかげている。とうてい受け入れることはできない」と感じる人がいるかもしれません。

 ビジネス書だと思って読み進めていくと「現実は幻想である。すべて、あなたの意識が創ったものです」と書かれているので、「この話は、ビジネスとどんな関係があるんだろう?」と疑問に思われる人もいるでしょう。
 しかし、本書を書いたシャインフェルドは、哲学者でもSF作家でもありません。いくつかのIT関連会社を起業して成功させた、れっきとした第一線のビジネスマンです。
 その彼が、私たちの生きている社会を「人間ゲーム」として捉え、次のように述べています。
「ちょうどハリウッド映画と同じように、あなたの世界にあるすべてのものはリアルで実態があるように見えますが、すべてが作り物なのです。あなたが五感で捉えているものは、すべて幻想──『人間ゲーム』をプレーするための、別の現実を創るために考えられた小道具や特殊効果──で、あなた自身が創り出した特殊効果が、幻想を信じがたいレベルに押し上げているのです」

 

 仏教には「この世界はマーヤ(幻影)である」という教えがありますが、彼はこの考えをストレートにビジネスの世界(人間社会)にも当てはめています。それも、単なるイメージとしてではなく、日常感覚の中で「この世界は、実は意識が作り出した幻想である」と確信を持って生活しているのです。
 だから、この本は単にビジネスゲームで他の競争相手から抜け出す方法を提示しているわけではありません。ゲームを成立させているこの世界(土台)そのものが幻想なのだから、まずそこから脱出しなさいと言っているのです。

 

 彼は、こうした考えが、決して根拠のないものではない証として、量子物理学の理論を紹介しています。少し長くなりますが、引用させていただきます。
「科学の世界では『ゼロ・ポイント』と呼ばれているフィールド(場)が発見されています。フィールドは、まだ姿を与えられていない無限の可能性を持つエネルギーとして存在しています。つまり、どんなことも可能で、どんなものでも創れるということです。そこにはいかなる限界も制限もありません。
 けれども意識が何かを創ろうという特定の意図によってフィールドに向けられると、無限の可能性の状態が崩れ、意図によって定められた、いわゆる現実の状態に変わります。量子力学では、これを『波束の崩壊』と呼んでいます。無限から有限への崩壊が起きると、宇宙(三次元世界)という幻想が創られます」
 この三次元世界(幻想)を、彼はホログラムのようなものだと言っています。映画『マトリックス』や『スター・トレック』などで登場人物が使っている「ホロデッキ」のようなものです。ホロデッキとは、現実とほぼ変わらない空間や世界を創り出す架空装置のことで、「究極のホログラム」とも呼ばれています。

 

 彼はビジネスゲームから脱出するためには、「あなたが経験するあらゆることを細部にいたるまで、あなたの意識が創ったホログラムである」と気づくことが、絶対に欠かせない要件だと述べています。そして、次のようにアドバイスをしています。
「焦点を創造物(幻想)からそらして、真の創造プロセスと創造者(意識)としての自分自身に焦点を向けなくてはなりません。そうすることによって、あなたは力を取り戻し、あなたの自然な状態である無限の豊かさを発揮することができるのです。そうすれば、あなたは『ビジネスゲーム』から完全に脱出して、制限や制約をまったく受けることなく、自由に『人間ゲーム』をプレーできるようになります」

 

 私は若い頃から瞑想やヨガ、なかでも仏教の唯識思想に深く傾倒していたので、「もしかしたら、この世界は幻想ではないか?」という考えは比較的受け入れやすいほうだと思ってます。しかし、著者のように仕事の現場で日常的に意識することはほとんどありません。瞑想をしている時に多少感じることはありますが、日常意識に戻るとすぐに「娑婆モード」(幻想)の中に取り込まれてしまいます。平日、仕事に追われている中では、よほど自覚してないと、こうした意識でいることはかなり難しいのではないでしょうか。
 著者も言うように、「脱出ポイント」を超えるまでは、最後まで根気よく諦めずに持続させることが重要なのかもしれません。

 

【おすすめ度 ★★★】(5つ星評価)



書評 精神世界の本ベスト100に戻る

関連ページ

[1] エンデの遺言/河邑厚徳+グループ現代
[2] 「原因」と「結果」の法則/ジェームズ・アレン
[3] 富を「引き寄せる」科学的法則」/ウォレス・ワトルズ
[4] 流れとかたち/エイドリアン・ベジャン
[5] 唯識十章/多川 俊映─
[6] 2045年問題/松田卓也
[7] トランスパーソナルとは何か/吉福伸逸
[8] 一流人たちの感性が教えてくれた「ゾーン」の法則/志岐 幸子
[9] ザ・マスター・キー/チャールズ・ハアネル
[10] 禅と食/枡野 俊明
[11] プロセス指向心理学/アーノルド・ミンデル
[12] ルーフ・オブ・ヘブン/エベン・アレキサンダー
[13] 異次元は存在する/リサ・ランドール
[14] ザ・シークレット/ロンダ・バーン
[15] 宇宙瞑想/横尾忠則対談集
[16] アップデートする仏教/山下良道、藤田一照
[17] ザ・ゲート/エリック・パール
[18] 100万回生きたねこ/佐野洋子
[19] 神様のホテル/ビクトリア・スウィート
[20] 風邪の効用/野口晴哉
[21] わら一本の革命/福岡正信
[22] ネイティブ・マインド/北山耕平
[23]生きる。死ぬ。/土橋重隆、玄侑宗久
[24] あわいの力/安田 登
[25] 里山資本主義/藻谷 浩介
[26]しらずしらず/ムロディナウ
[27] すべては宇宙の采配/木村 秋則
[28] 奇跡の脳/ジル・ボルト・テイラー
[29] 祈る心は、治る力/ラリー・ドッシー
[30] 脳の神話が崩れるとき/M・ボーリガード
[31] なぜ、これを「信じる」とうまくいくのか/マシュー・ハトソン
[32] 超常現象 科学者たちの挑戦/NHK取材班
[33] 皮膚という「脳」/山口 創
[34] 魚は痛みを感じるか?/ヴィクトリア・ブレイスウェイト
[35] 食品の裏側──みんな大好きな食品添加物/阿部 司(東洋経済)
[36] 「臨死体験」が教えてくれた宇宙の仕組み/木内鶴彦(晋遊舎)
[37] かもめのジョナサン完成版/リチャード バック(新潮社)
[39] 思考のすごい力/ブルース・リプトン(PHP研究所)
[40] 脳科学は人格を変えられるか?/エレーヌ・フォックス(文藝春秋)
[41] がんが消えた──ある自然治癒の記録/寺山心一翁(日本教文社)
[42] 体の知性を取り戻す/尹 雄大(講談社現代新書)
[43] 宇宙のパワーと自由にアクセスする方法/ディーパック・チョプラ(フォレスト出版)
[44] 腰痛は怒りである──痛みと心の不思議な関係/長谷川淳史(春秋社)
[45] 野生の体を取り戻せ!/ジョン J・レイティ、リチャード・マニング(NHK出版)
[46] がんが自然に治る生き方/ケリー・ターナー(プレジデント社)
[47] 打てば響く/竹村文近、大友良英(NHK出版)──音の力、鍼の力
[48] 病は心で治す──健康と心をめぐる驚くべき真実/リサ・ランキン(河出書房新社)
[49] フューチャー・オブ・マインド──心の未来を科学する/ミチオ・カク(NHK出版)
[50] 目の見えない人は世界をどう見ているのか/伊藤亜紗(光文社新書)

●トップページ ● 書評 精神世界の本 ベスト100 ● スピリチュアル書店 ● 出版社&WEBマガジン ● トピックス