[35] 食品の裏側──みんな大好きな食品添加物/阿部 司(東洋経済)
じつは、私が「裏」の表示を気にするようになった理由は、この本を読んだことがきっかけです。それまでは、食品の中に何が入っているのかなんて、まったく気にはなりませんでした。
それが、この本と出会ってからは、食品の中に使用されている原材料、とくにどんな添加物が入っているのかを必ず確認するようになりました。そして、なるべく添加物の少ないものを選んで買うようになったのです。
著者の阿部氏は、かつて食品添加物を売り歩くトップセールスマンでした。だから、誰よりも食品添加物の現場を知り尽くしている人だといえます。その彼が、なぜ「食品の裏側」を告発する本を書くようになったのか。少し長くなりますが、その経緯を述べているので引用してみます。
「それは長女の3回目の誕生日でした。食卓には妻が用意したご馳走が、所狭しと並んでいます。その中に、ミートボールの皿がありました。じつは、そのミートボールは私が開発したもので、本来なら産業廃棄物となるべきクズ肉を、添加物を大量に投入して『食品』に仕立て上げたものだったのです。
はじめは気づかなかったのですが、その商品だとわかると、私は慌ててミートボールの皿を両手で覆いました。『これは食べたらいかん!』と言って、皿を取り上げ、説明にもならない説明をしながら、胸がつぶれる思いでした。
その時、はっきりわかったのは、このミートボールは自分の子供たちには食べてほしくないものだったのです。──そうだ、自分も自分の家族も消費者だったのだ。いままで自分は『つくる側』『売る側』の認識しかなかったけれども、自分は『買う側』の人間でもあるのだ。いまさらながらそう気づいたのです」
添加物については誰よりも詳しいと自負していた彼が、添加物のもっとも重要な「安全性」という問題をまったく無視してきたことに初めて気づいた瞬間でした。その「事件」がきっかけとなって、彼は会社を辞める決心をします。
「私は添加物を大量に投げ込んでつくる加工の現場を、この目で見てきた『生き証人』なのです。だからこそ、私には添加物の現状を告発するという責任があるのではないか。自分の中に蓄積されたものや添加物の現状をひとりでも多くの人に伝えることこそが、私の使命ではないか。そして、それが過去に対する、せめてもの罪滅ぼしになるのではないか。そう思うに至ったのです」
著者は、読者に向かって次のように問いかけています。
『一流メーカーが、危ない添加物を食品に使っているわけがない』『変なものがコンビニで売られているはずがない』──そう信じて、膨大な添加物をとっている人がどれほど多いことでしょうか。その「裏側」を知ると絶対に食べたくないと思う食品を何も知らずに食べている人が、いったいどれほどいるでしょうか」
アメリカのことわざに「We are What we eat」という言葉があります。毎日食べるものが、私たちの体をつくっているという意味です。私たちの体を形づくっている60兆の細胞は、遅いものでも約1年ですべて新しい細胞と入れ替わります。つまり、細胞は食べ物からつくられるので、健康な体は食事によってつくることができるわけです。逆にいえば、食によって病気もつくり出せるということになります。
この本はロングセラーになっているので、すでに読まれた方もいるかと思います。もし、まだ読まれていなかったら、ぜひ一読をおすすめします。
ところで、私は、一部の人たちからこの本に対する批判があることは承知しています。しかし、それらの批判を読んでみると、いずれも揚げ足を取るようなものばかりで,本質的な批判にはなっていないと思います。私は、著者の「食に対する基本的な考え方」は間違っていないと考えています。
最近、続編の『食品の裏側2/阿部 司──やっぱり大好き食品添加物』(東洋経済)が出版されました(左下写真) 。
今は表示を見て選んでも、そこには書かれていない、隠れた部分で添加物が使われているという現実があります。続編では、その隠れた部分に重点をおいて書かれています。できれば、そちらのほうも一読してみてください。
【おすすめ度 ★★★★】(5つ星評価)
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