[29] 祈る心は、治る力──祈りは良き薬である/ラリー・ドッシー(日本教文社)

 本書は、最新の医学研究をもとに実証した「祈りがもたらす治癒効果」について書かれた興味深い本です。よく知られているように、著書のラリー・ドッシーは、「心と自然治癒」の研究における第一人者です。

 日本では考えられないことですが、80年代からアメリカでは、実際に数多くの医療機関で「祈り」の科学的研究が盛んに行なわれてきています。
 そして、多くの実験によって、祈りには確かに治療的効果があることが徐々に明らかになってきたのです。現在では、すでに全米の約3分の1以上の大学医学校で、祈りを含むヘルスケアについての講座が設けられています。

 

 では、祈りの癒し効果についての科学研究は、どのような方法で行なわれてきたのでしょうか。その結果、祈りについて、どんなことがわかってきたのでしょうか。
 著者は、80年代に初めて祈りに関する研究論文を読んだ時のショックを、次のように語っています。
「まさか、祈りを実際に新薬の場合のように試験するとは、私には考えもつかなかった。すなわち、半数の患者(実験群)に対しては祈り、その他の半数の患者に対しては『コントロール群』(対照群)として祈らず、そして、その結果を測定しようというのである」
 この試みによって、離れた場所からの「他者への祈り」に治療的効果があることが示されたのです。しかし、その時点では、まだ彼は祈りの効果というものに懐疑的だったと述べています。一つの研究結果だけでは、説得力に欠けていると考えたのです。そこで彼は、さらなる証拠が必要だと考え、独自に調査に乗り出しました。
 すると驚いたことに、祈りをともなう「癒し」という領域において、すでに130を超える科学的研究があることを発見したのです。その結果、彼は「すべての実験で成功したわけではないが、これらの研究結果は、その半数以上から、明らかに祈りが有効であるという統計学的に有意な証拠が得られている」と判断したのです。
 そして、これらの研究によって、いままで否定的だった科学者や医師も、祈りの効果について認めざるを得ませんでした。ただ、彼らはそれを「プラシーボ効果」によるものだと考えていました。ご存知のように、プラシーボ効果とは、期待感、自己暗示といった心理的要因によって、偽薬でも効果をもたらすというものです。
 そうした考えに対して、著者は「祈りにはそれ以上の力がある」と、次にように反論しています。。
「病院やクリニックにおいて、実際に実験をしてみると、離れた場所からの祈りは、たとえ祈りを受ける人が、誰かに祈られていることを知らなくても、効果が出ている。しかも、祈りは、人間以外の存在(動物、植物、微生物など)にも効果(成長率)をおよぼすことが立証されているのである」
 つまり、患者には、実験していることすら知らされていないのです。また、当たり前のことですが、植物や微生物にしても同様です。これらの実験結果から、彼は祈りの効果がプラシーボとはまったく異なるものであると確信したのです。

 

 また、不思議なことに、祈りの効果は距離にも関係のないことがわかってきたのです。彼は、その根拠を次のように述べています。
「心臓病の専門医ランドフ・バードがサンフランシスコ総合病院の患者393名の協力を得て行なった研究(1988年)では、東海岸側からの祈りも、西海岸にあるこの病院に近いグループからの祈りとまったく同様に効果的だったことがわかったのである。
 また別の研究では、近距離(約1.4m)と遠距離(24.1km)のそれぞれから行なった祈りで、微生物の成長率に人の祈る力がどれだけ影響を与えたのかが比較された。その結果、距離の遠近は要因とならず、影響の強さは同じだったのだ」
 現在までのところ、なぜ祈りの効果が距離には関係ないのか、説明はできていない。しかし、著者は次のように考えることができると言っています。
「量子物理学においては、過去四半世紀の間に行なわれたいくつかの実験で、『非局所的』事象というものの実在が明らかにされてきた。つまり、もし接触していた二つの素粒子が分離した時、片方の素粒子における変化は、もう一方の変化と相互に関係しあう。これは、どれだけそれらの距離が離れていようが関係なく、まったく同時に、同じ度合いで起こる」
 つまり、遠く離れた素粒子が一瞬にしてシンクロしてしまうのです。著者は、祈りの効果もこの非局所的な量子的事象ではないかと、次のように推論する。
「それにしても、距離の離れた素粒子同士が、どうやって遠くにあるパートナーの素粒子の変化を即座に知りうるのか? このことは、じつは本当はそれらは離れておらず、ある意味では、一つの素粒子、『一つの心』ではないのか!?」
 ノーベル賞受賞の物理学者であるブライアン・ジョセフソンも、これらの非局所的な量子現象は、遠距離間で起こる多くの人間の事象(超感覚的知覚)の基礎をなすものかも知れないと述べている。
 ただ、こうした「説明」は、一つの謎を別の謎に置き換えているにすぎないともいえます。結局のところ、どのように非局所的な量子的事象が起こるのかはわからないのです。物理学者たちは、ただ、そういうことが起こるのだということを知っているにすぎません。
 前回でも述べましたが、科学の進歩は、謎がなくなるどころか、かえって深まってくるようです。

 

【おすすめ度 ★★★】(5つ星評価)



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