[23]生きる。死ぬ。──ガンは心の病気/土橋重隆、玄侑宗久(ディスカバー21)

 いま私が一番関心を持っているのは、「ガン」という病気です。特に、奇跡的に生還した末期ガンの患者さんについての詳しい情報です。

 西洋医学の常識では治らないとされる末期ガンの患者さんでも、なぜか奇跡的に治ってしまうケースがある。そうした症例がなぜ起きるのか。治る人と治らない人の何が違うのか? そこには、必ず何か理由があるはずです。もちろん「ガンもどき」(近藤理論)ではなく、全身に転移して医者から見放された「本物のガン」患者です。
 私は、どうしてもその理由が知りたいと思いました。些細なことでもいい、何かヒントになるものが見つかればいいと思い、信頼できる著者や体験者のガンに関する本を探していました。

 

 じつをいいますと、先日、私の親友(女性)が卵巣ガン(ステージ3)で入院することになりました。心の友であり、とても大事な人なので、私にとって大きなショックでした。彼女に何とかして元気になってほしいという思いから、この2週間、ガンに関する本(阿保徹、近藤誠、星野仁彦、帯津良一、土橋重隆など)を片っ端から読みあさっておりました。
 この本も、そのうちの1冊です。対談相手の土橋氏は、心の変化を含め、ガンになった原因ばかりでなく、治った原因にも注目していることを知り、非常に興味を持ちました。彼が「患者さんの生き方・考え方が変わると末期ガンでも治ることがある」と語る言葉に強い感銘を受け、さっそく読まさせていただきました。

 

 本書は、長年ガン患者の治療に携わってきた外科医・土橋重隆氏と芥川賞作家の禅僧・玄侑宗久氏との対談をまとめた本です。これまでのガンに対する常識を再点検し、病気と心の関係、さらには死や生きることの意味について幅広く語り合っています。この対話の中に、私が探していた「奇跡の生還」の理由についての手がかりがあるような気がします。少し長いですが、印象に残った言葉を引用させていただきます。

 

玄侑 『ガンで亡くなる人が後を絶たない一方で、逆になぜか治ってしまう人もいるわけじゃないですか』
土橋 『実際、ずいぶんいますよ』
玄侑 『こういう患者さんはいろんなことを試されますから、結局何が効いたのかわからないということが多いと思うんですが』
土橋 『いや、私はそうした治療だけで治ったわけじゃないと思いますね。治った患者さんを見ていると、まずどこかで心の変化があって、とにかく何かやってみようとか、もうなるようになれとか、気持ちが能動的になっているんです』
土橋 『おお、開き直るわけですね』
玄侑 『そういうスイッチが入ることで、自分以外のもののコントロールから外れますよね。その瞬間、生き方が変わるんです』

 

 これまでの自分を酷使してきたような生き方を、何らかの形でチェンジする。その結果、ガンが増える環境が改善されていく。だから、末期であっても治ってしまうことがあると述べています。
 とはいっても、ガンになると体と心の余裕がなくなるので、生き方をチェンジさせることは、かなり難しいような気がします。しかし、著者らはガンになることは、今までの生き方(生活習慣)に体が全面的に「NO」という信号を出しており、それは生きるためのラストチャンスでもあると言っています。

 

土橋 『私はガンは必然性をもって現われている、という感じがする。そういうイメージがあるんですね。必然性があるというのは、死ぬための必然性じゃなくて、生きるための必然性。体全体から見ると、そういう必然性をうながす働きをガン細胞は持っている。つまり、生命を長生きさせようとしているのです』
玄侑 『だとすれば、自分の体の変化に適応しようとして、必死になって頑張っているのが、ガン細胞ということになりますね』
土橋 『生きていくなかで、必要があってそうなったという……』
玄侑 『どちらにしても敵ではないわけです』
土橋 『だから「悪いから治す、症状を取り除く」という発想から離れるべきだと思うんです』

 

 これが、この本のテーマである「ガンは治そうと思っても治らない」という本来の意味です。

 

玄侑 『この体をなんとか守るために、厳しい環境に適応して、自ら先祖返りしていった非常に果敢な細胞たちなんですから』
土橋 『私もそう思いますね。そういうことを受け止められた患者さんは、もちろん、そんな表現はしておりませんが、感覚としてそういうものを感じとれた患者さんは、仮に末期であっても治っていくんです。ガンというのは、生命が生き延びるために登場させた、最後の助っ人という感じがするんですよね。ほかの発熱とか痛みとかよりはるかに強烈な、「ここまでやるから後は自分で頑張りなさい」というシグナルなんです』

 

 一般的に私たちが抱くガンのイメージとは違って、ガンは敵ではなく「助っ人」であるという認識を持つことによって心の大転換が起こり、奇跡をもたらすのかも知れません。
 以上の対話の中から、私が冒頭で抱いた疑問に対するひとつの答えが、少し見えてきたような気がします。

 

【おすすめ度 ★★★】(5つ星評価)



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