[20] 風邪の効用──大病になる人は風邪を引かない/野口晴哉     (ちくま文庫)

 よく知られているように、著者の野口晴哉氏は、日本における整体の草分け的存在です。17歳で自然健康保持会を設立し、その後、多くの整体指導者を育てあげ、「野口整体」の普及に一生を捧げた人です。本書は整体を学びたい人のために出版された本ですが、一般の方が読んでも得るところが大きいと思います。

 

 意外に思われるかも知れませんが、著者は本の中で「大病になる人は風邪を引かない」と言っています。
「ガンとか脳溢血になる人をていねいに観察していると皆、共通して風邪を引かないという人が多い。長生きしている人は、絶えず風邪を引いたり、寒くなると鼻水が出るというような、いわゆる 『病み抜いた』 という人です」
 では、なぜ風邪を引かない人は大病になるのでしょうか? その理由を次のように述べています。
「健康な体というのは弾力があって、伸び縮みに幅があるのです。ところが、その人がいつも使い過ぎている所(偏り疲労部分)は硬くなって、筋肉の伸び縮みの幅が狭くなっている。そうなると体が強ばって鈍くなり麻痺してくるので、体の異常や病気も感じなくなる。その結果、自分は健康だと思い込んでしまう。そういう人は、得てして大病で突然倒れるということが多い」
 ところが、「風邪を引くと、その鈍い体が弾力を回復する」というのです。風邪は重い病気にかからないための微調整だというわけです。自然の治癒作用であり、偏って疲労した部分を治してくれる働きがある。したがって、風邪は体の悪いところを治してくれるから、むしろ引いたほうがいいという結論になります。
 このように体が鈍くなっている人も風邪を引いて、その風邪を上手にやり過ごすと、鈍かった身体が敏感になってくる。血管の弾力も回復してくるので、血圧が低くなります。
 また、ガン細胞は39.3度以上の高熱になると死んでしまいます。だから風邪を引き高熱を出せば、その結果、脳溢血やガンの予防にもなるということです。
 ただし、体が鈍くなっている人の場合、いったん風邪を引くと比較的重い症状になるので、十分に静養することが必要です。

 

 風邪を引けば当然、熱が出て汗をかくので、乾いたタオルでよく拭きとります。著者は、熱を下げようとして、すぐに氷などで冷やさないほうがいいと言っています。42度までの高温は大丈夫だそうです。42度以上になると脳が破壊されるので、その時には下げなくてはいけません。いずれにしても、水分を補給して温かくして寝ていれば、じきに風邪が抜けて熱が下がってきます。
 ただ注意点としては、治りはじめた時にいったん平温よりも下がることがあるので、その時は平温に戻るまでは絶対に安静にすることが大事だと述べています。その際、無理をすると大病を招くそうです。
 そうは言っても、仕事などで忙しい人は、3、4日寝ていたくても休めない人もおります。だから、つい市販の風邪薬や病院で薬を処方してもらい、少しでも早く熱を下げて仕事をしてしまう。現代人の多くの方々が、余裕のない生活をしていることを考えれば無理もないことです。

 

 最後に、野口整体の重要な概念である「愉気法」「体癖」「活元運動」という3つの言葉について簡単に解説しておきます。
 まず「愉気法」ですが、これは昔から「手当て」とも呼ばれているもので、誰でも体のどこかが痛い時には、無意識のうちに自分で手を当てることがあります。また背中が痛い時には、人に擦ってもらったりします。これは人間の本能的な行為で、野口整体では、あらゆる施術の基本になっています。
「愉気法」は手に「気」が集まっていることが大切です。施術する人は、手に「気」を集中させ、相手に働きかけます。呼吸法により心身を統一して、「気」を指先に集まるようにします。その際、恨みや嫉妬で思いつめるような心ではない、雲ひとつない青空のような「天心」で集中させなさいと言っています。
 次に「体癖」ですが、これは、その名前が示すように「体のクセ」のことを意味しています。その人らしい考え方や感性が、個人の体型や動作の習性となって現われるというものです。だから、自分の「体癖」に合わない仕事や生活を強いられたり、自分らしさを発揮できない暮らしをしていると体が歪んでしまい、病気になったりケガをすることが出てきます。
 3つ目は「活元運動」(自働運動)で、体の奥から出てくる意識しない動きです。「寝返り」のようなもので、身体自らが不調を回復する動きをすることです。クシャミやアクビなどの人が自然に行う動作も、活元運動の一種といえます。

 

 最近は「引き寄せの法則」ブームのためか、日本ではヘッド(頭による思考やイメージなど)寄りのメソッドに関心が高まっています。私は、この野口整体やボディワーク、ヨガなどのように、身体へのアプローチも大事だと思っています。ヘッドに偏りすぎると、心と体が分離して全体のバランスが崩れてしまい、精神的にも肉体的にも悪影響が出てきます。
 著者も言うように「心のクセ」が「体のクセ」に現れてくることは確かです。しかし、「体のクセ」をなくすには、身体への働きかけも必要になってきます。すでに体に兆候が出ている人は、自分の体の動きを注意深く観察して、全体のバランスを整えることをお勧めします。日頃から身体の「声」に耳を傾けて、その微妙な変化に敏感になることも大切なことだ思います。

 

【おすすめ度 ★★★】(5つ星評価)



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