[19] 神様のホテル──「奇跡の病院」で過ごした20年間/ビクトリア・スウィート(毎日新聞社)

 神様のホテル? 最初に書店で見た時は「神様が泊まっているホテル」という意味かと勘違いしてしまいました (^0^)

 タイトルに惹かれて「まえがき」を読んでみたら、サンフランシスコにある病院で20年間働いていた医師が書いたドキュメンタリーの本でした。患者や医師、看護師たちが、ホテル(病院)で繰り広げる人間模様を描いた作品です。彼らの出会いの中に、現代の私たちが失ってしまった「人間の絆」を見ることができます。
 この本の舞台であるラグナ・ホンダ病院は「救貧院」と呼ばれ、おもに回復の兆しのない貧しい病人が運び込まれてくる施設です。
 著者のスウィート医師は、当初 ここで2カ月間だけ働くつもりでしたが、この病院の「魔法」に魅了され、その後20年以上にわたって勤務することになります。彼女の人生は、このラグナ・ホンダで出会った患者やスタッフとの触れ合いによって大きく変わっていきます。
 あたかも神様が魔法をかけたように、病院の中では日々「奇跡」が起きていたのです。

 

 彼女はラグナ・ホンダの「魔法」について、次のような実例を挙げて説明しています。
「その病棟の看護師長が、36人の患者全員に靴下とブランケットを編んでいたのです。このブランケットを見れば、病院中の誰もが彼女の気配りに気がつきました。また、面会に来た家族は、老女たち(患者)が化粧をほどこされ、髪を整えられ、爪が磨かれているのを見て、看護師長の優しさと思いやりに深く感動したのです。これは、ほんの1例にすぎませんが、私は、ここのスタッフの『心を尽くしたケア』にまず驚かされたのです」
 また、先輩のカーティス医師からも、ケアにおける思いやりとは何かについて深く教えられたと言っています。
「リハビリ病棟で何カ月も前から退院できる状態なのに、まだ退院できていない患者がいました。カーティス医師が『どうして歩けるのに退院しないの』と尋ねたところ 『靴がないからです。注文してもらったんですが、メディケイド(医療扶助制度)の承認を待っているんです』ということだった。その話を聞いて、カーティス医師は忙しいにもかかわらず、すぐに車に乗り込み靴を買いに出かけ、急いで病棟へと戻ってきたのです」
 著者はこの時、「患者のケアにおいて大切なのは、患者に思いやりを持つことである」という格言の本当の意味を理解したと述べています。
「患者に関心だけではなく、思いやりを持ちなさい」というのは、「小さな行ない」のことを指していることに気づいたのです。命を救うような壮大なことである必要はなく、新しいメガネだとか、食事を変えるといった、簡単なことでいい。彼女は「小さなお世話」の大切さを教えられたと言っています。
 このラグナ・ホンダ病院には、こうした患者との心温まる交流が、日常的にいたるところで見られました。著者が最初に面接をした時に、メイジャー医師から「きみも魔法にかかるよ」と言われたが、その予言通り、彼女はすっかりここの虜になってしまったのです。
「魔法」とは、病院にいる人たちが皆、神様のような慈悲の心(心を尽くしたケア)で接していたことでした。

 

 スウィート医師は、この病院で現代の医療ではどうすることもできない重症患者たちとも向き合うことになります。限られた予算や設備のなか、彼女は「ここで自分に何かできることはないか」と考え、古代医療である「ヒルデガルトの医療メソッド」の研究を始めます。
「肉体は障害さえなければ、機械と違って自己治癒することができる。生きた人間と機械の違いはここにある。だから、時間をかけてウィリディタス(自然治癒力)を阻害しているものを取り除けば、植物が青々と育つように、患者の傷を治してくれるだろう」
 彼女はさっそくこの療法を実践したところ、驚くべきことに救われる患者たちが次々と出てきたのです。 神様の「魔法」は、彼女の療法にも、かけられていたのでしょうか。
 ラグナ・ホンダ病院では、時間をかけて患者とじっくり向き合う「スロー・メディスン」が実践されています。古代医療には「病気が治るのには、病気が進行するのにかかったのと同じだけの時間がかかる」という格言があります。これは「時間のチンキ剤」と呼ばれ、「ほぼすべての病気は、正しい環境下でなら時間とともに治る」とされていました。
 現代医療が非効率と切り捨てたその時間こそ、ラグナ・ホンダには重要な要素だったのです。非効率に見えても、患者をよく観察することで投薬量を減らし、誤診を防ぐことができるため、最終的にはより効率的だと考えられているからです。

 

 費用対効果を追求していくなかで、しだいに「心」を失ってゆく現代医療──それに抗うように、患者の「心」を大切にする医師や看護師たちの姿に、あなたもきっと感動すると思います。
 現代の医療の在り方について本質的な疑問を投げかけており、医療関係者だけではなく、一般の方々にもぜひ読んでもらいたい本です。
 ひょっとしたら、このホテル(病院)には、神様が本当に泊まっていたのかも知れませんね (^-^*)

 

【おすすめ度 ★★★】(5つ星評価)



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