[18] 100万回生きたねこ──あなたの心を映しだす不思議な絵本/佐野洋子(講談社)

 この絵本は、よく知られているので、すでに読まれた方も多いと思います。先日、本棚の奥に埋もれていたのを見つけ、30年ぶりに読み返してみました。

 優れた作品は、鏡のような存在だと思います。読む人の心が作品に投影され、それぞれの読者によってインパクトの受け方がまったく異なってきます。この本も、そうした作品の一つです。
 初めて読んだ頃、たまたま瑛九(えいきゅう)の油絵(抽象絵画)を見る機会がありましたが、やはり、その時の自分の心が作品の中に映しだされていて驚いた記憶があります。
 この本も、それぞれに受けとめられる不思議な絵本です。あなたが友人にこの本の感想を尋ねてみても、おそらく十人十色の答が返ってくると思います。読む人によって解釈がまったく違ってくるからです。
 ひと言でいえば、一匹の猫が輪廻転生を繰り返していく様を描いた作品です。それまで心を開かずに虚栄心のみで生きていた猫が恋をして家族を持ち、大切な人を亡くすことで、初めて愛と悲しみを知るというシンプルなストーリーですが、不思議な読後感を持たせる印象的な作品です。
 この絵本の作者である佐野洋子さんは、詩人谷川俊太郎氏の奥さんです。デザイン、イラストレーションの仕事を手がけながら、『やぎさんのひっこし』で絵本作家としてデビュー。エッセイストとしても知られ、『神も仏もありませぬ』で2004年度の小林秀雄賞を受賞しています。
 じつは私はこの本を買った記憶がないので、誰かからプレゼントされた本だと思います。35歳の頃なので、もう30年位前になります。おそらく、その頃お付き合いしていた女性から頂いたのだと思います。最初にこの絵本を手にした時は、その奇妙なタイトルに興味を持ったことをよく覚えています。

 

 多くの方々が、この本について様々な感想を述べていますので下記に挙げておきます。いかに、多くの「心」がこの作品に映し出だされているがわかるででしょう。

 

「わたしたちは飼い猫じゃない。ノラ猫のように自由なわけで、だから幸せを自分でつかまなきゃ、受け身じゃ意味がない」

 

「愛されるとは一方的な思いこみを背負わされ、残酷なことだ」

 

「生まれ変わりたいと思うような人生なら、死ななくてもリセットすればいい。人間は生きながらにして、いつでもいくらでも生まれ変われるんだから!」

 

「人生はただ一度しかない。 一回しかないから精一杯よりよく生きなければならない」

 

「100万回誰かに愛されるより 一度だけ心底愛することが大事。 それを知って欲しくて何回も神様が生き返らせた。そして二人は天国で永遠に一緒になった 」

 

「猫は『慈悲の一念』によって解脱を遂げたのだ。主人公の猫は自分が死ぬことは一顧だにしなかった。しかし、愛する伴侶を喪った時、初めて『死』はありきたりのものではなくなった。『固有の死』は『かけがえのない生』そのものであった」

 

「猫は充実した人生を生きた。だから、もう生まれ変わらない。充実した人生を全力で生きることで、生まれ変わりなどというものに振り回されることはなくなる」

 

「猫の100万回の涙には、かつて自分が100万回死んで、涙を流した100万人の飼い主の涙が含まれていたのではないでしょうか。猫は大切な人を失って、飼い主たちの気持ちもわかったのでしょう」

 

「猫は誰かに生き方を拘束されるよりも、自分の手で自分の道を作りたかったんだと思います。猫は飼い主たちにどんなに愛されても、自分のことが好きになれなかったんだと思います」

 

「白猫だけは違いました。それは、白猫が飾りを取り払った(誰の所有物でもない)本当の自分をみてくれたからでした。白猫は、100万回生きたということでなく、猫自身に注目してくれたのでしょう。だからこそ、猫は白猫のそばにいることに安らぎを感じ、死ぬまでずっとそばにいたのでしょう」

 

「100万回生きて100万回死んだ主人公の猫は、最後の最後には二度と生き返らなくなる。彼は生まれて初めて本当の意味で死んでしまうわけです。でも、たいていの読者は物語の終わりを知ったとき『あー、よかった。めでたし、めでたし』という気分になっているはずで、そこがすごい。主人公が死んでしまうのに『あー、よかった』と心から思えるから不思議です」

 

 それぞれ微妙に視点が違っていて、興味深く読ませていただきました。 さて、あなたはどのような感想を持たれたでしょうか。
 まだ読んでいない方は、ぜひ一読してみてください。きっと、あなた自身の今の心境が映しだされるはずです。

 

【おすすめ度 ★★★★】(5つ星評価)



書評 精神世界の本ベスト100に戻る

関連ページ

[1] エンデの遺言/河邑厚徳+グループ現代
[2] 「原因」と「結果」の法則/ジェームズ・アレン
[3] 富を「引き寄せる」科学的法則」/ウォレス・ワトルズ
[4] 流れとかたち/エイドリアン・ベジャン
[5] 唯識十章/多川 俊映─
[6] 2045年問題/松田卓也
[7] トランスパーソナルとは何か/吉福伸逸
[8] 一流人たちの感性が教えてくれた「ゾーン」の法則/志岐 幸子
[9] ザ・マスター・キー/チャールズ・ハアネル
[10] 禅と食/枡野 俊明
[11] プロセス指向心理学/アーノルド・ミンデル
[12] ルーフ・オブ・ヘブン/エベン・アレキサンダー
[13] 異次元は存在する/リサ・ランドール
[14] ザ・シークレット/ロンダ・バーン
[15] 宇宙瞑想/横尾忠則対談集
[16] アップデートする仏教/山下良道、藤田一照
[17] ザ・ゲート/エリック・パール
[19] 神様のホテル/ビクトリア・スウィート
[20] 風邪の効用/野口晴哉
[21] わら一本の革命/福岡正信
[22] ネイティブ・マインド/北山耕平
[23]生きる。死ぬ。/土橋重隆、玄侑宗久
[24] あわいの力/安田 登
[25] 里山資本主義/藻谷 浩介
[26]しらずしらず/ムロディナウ
[27] すべては宇宙の采配/木村 秋則
[28] 奇跡の脳/ジル・ボルト・テイラー
[29] 祈る心は、治る力/ラリー・ドッシー
[30] 脳の神話が崩れるとき/M・ボーリガード
[31] なぜ、これを「信じる」とうまくいくのか/マシュー・ハトソン
[32] 超常現象 科学者たちの挑戦/NHK取材班
[33] 皮膚という「脳」/山口 創
[34] 魚は痛みを感じるか?/ヴィクトリア・ブレイスウェイト
[35] 食品の裏側──みんな大好きな食品添加物/阿部 司(東洋経済)
[36] 「臨死体験」が教えてくれた宇宙の仕組み/木内鶴彦(晋遊舎)
[37] かもめのジョナサン完成版/リチャード バック(新潮社)
[38] 「ビジネスゲーム」から自由になる法/R・シャインフェルド(VOICE)
[39] 思考のすごい力/ブルース・リプトン(PHP研究所)
[40] 脳科学は人格を変えられるか?/エレーヌ・フォックス(文藝春秋)
[41] がんが消えた──ある自然治癒の記録/寺山心一翁(日本教文社)
[42] 体の知性を取り戻す/尹 雄大(講談社現代新書)
[43] 宇宙のパワーと自由にアクセスする方法/ディーパック・チョプラ(フォレスト出版)
[44] 腰痛は怒りである──痛みと心の不思議な関係/長谷川淳史(春秋社)
[45] 野生の体を取り戻せ!/ジョン J・レイティ、リチャード・マニング(NHK出版)
[46] がんが自然に治る生き方/ケリー・ターナー(プレジデント社)
[47] 打てば響く/竹村文近、大友良英(NHK出版)──音の力、鍼の力
[48] 病は心で治す──健康と心をめぐる驚くべき真実/リサ・ランキン(河出書房新社)
[49] フューチャー・オブ・マインド──心の未来を科学する/ミチオ・カク(NHK出版)
[50] 目の見えない人は世界をどう見ているのか/伊藤亜紗(光文社新書)

●トップページ ● 書評 精神世界の本 ベスト100 ● スピリチュアル書店 ● 出版社&WEBマガジン ● トピックス